先生の連絡で迎えに来てくれたお母さんに「体調悪いなら言いなさい!」とひっぱたかれたあと車で連れて帰ってもらい、貴重な振替休日も含め連休を布団で寝て過ごし、そのまた翌日。
無事元気に登校することができた私は昼休憩、私はお昼ご飯を大急ぎで口にかき込み、あまりの勢いに目を丸くする夕歩に明らかに男物だとわかるタオル――夕歩はもっと目を丸くした――を、用事がわかるように見せつけながら振りかざし、教室を飛び出した。
私のクラスは7組。そして海ちゃんのクラスは3つ離れた4組だ。
息を切らせながら教室に辿り着いた私は息を切らせながら部屋の中を覗き込んだものの、海ちゃんの姿は無い。
まだご飯を食べているのではと思ったのだけれど、教室で食べてはいないのだろうか。
誰かに声をかけようかと悩んでいるうちに、不意にぽんと肩に手を置かれた。
「あれ、『ぶちょー』じゃん?」
「――!」
後ろから突然、心臓を鋭利な刃物で刺されたような気分だった。そのまま捻られて抉られて、引き抜かれるような。
後ろを見るのが死ぬほど嫌で、でも、それでもこのまま立ち去る方が怖かった。ゆっくりと、ゆっくりとふり返る。なかなか整った顔の、少し遊ばせた茶色っぽい髪色に程よく気崩した制服を着た背の高い男子生徒が怠そうに立っていた。
「なんか言えよ、感動の再会だろ」
ひら、とこれまた怠そうに手を振る。私はそれを見ながら浅く息を吸って、歯をぶつけ合わせた。
「……南波……っ」
「クラス違うと意外と会わないもんだよな。ま、こっちは気づいてたけど」
南波葉希。あの頃もそこそこ浮き名を流していたが、変わった様子は見受けられないのできっと今でもそうなのだろう。サッカー部やバスケ部にでも入っていそうな見た目で、いつもヘラヘラしているやつだった。
「……なんで、あんたがここにいるの」
「なんでもなにも、受験して受かったからだろ」
「そう、だけど……」
はっとして南波を睨みつける。
「あんただったの、夕歩に要らないこと言ったのは」
「あー、中学の話? そういや話したかもなぁ。隠すようなことじゃねえし、むしろ自慢すればいいだろ。上手いとこでやってたんだって。なあ、『ぶちょー』?」
「それ、やめて。なる前に……やめたでしょ」
彼は、同じ中学校の同級生で。
かつて同じ吹奏楽部で同じトランペットを吹いていて。
私の――一番知られたくないことを、全て知っている人だった。
勢いよく顔を背ける。
「とにかく、もう私たち他人だし。いちゃもんつけて悪かったけど、関わらないでほっといて」
「んでもお前吹部入ったんだろ? 俺も入ってるし、他人ではないんじゃねぇの」
血の気が引くのを感じならがら呆然と呟く。
「……うそ、いなかったじゃん」
「毎日あんなとこいてもしょうがないだろ。サボってても一生懸命練習してるやつらより上手いんだから」
飄々とした様子が中学の頃と被って、その頃のことを思い出しそうになって、反射的にそれを必死にかき消そうとするせいで頭がぎちぎちと痛む。
ぱっと照明に照らされて、輝くベル。
喘ぐように吸った、生温い空気。
――向けられた視線。
あの時の消し去りたい記憶たち。
「でもお前がいるなら楽しめそうだし、2年くらいは頑張ってもいいかもな」
「っ」
口を大きく開けて声を荒らげかけて、慌てて深呼吸をする。当時、こいつは事ある毎にやたらと絡んでくるやつだった。あの頃の私の何が面白かったのかはわからないけれど、今は違うと思えばもう関わってこなくなるだろう。
「何のつもりかしらないけど、私はもうあの頃とは違うから。ほどほどに、本気にならずに、楽しむの。それが一番いいってわかったから」
「……ふぅん?」
南波はそれだけ言って、すっと目を眇めた。
「まあどうでもいいけど。お前、どうせ伊集探してんだろ?」
「え、あ……そうだけど」
「そんな嫌そうな顔するか? 同じ中学だし、俺普通にそこそこ伊集と仲良いんだよ」
海ちゃんがこんなやつと……? と思わなくはないけれど一応黙っておく。
「あっち。3年の校舎側の非常階段あるだろ? あそこにいる。最近昼はもっぱらあそこだな」
ある。あるにはあるけれど、もう誰にも使われていないような場所のはずだ。
「なんでそんな所に?」
「……行きゃわかるんじゃねえの」
南波は何故か一瞬目を伏せて短く答えると、ひらひらと手を振る。
私はそれを横目で見て、そそくさと逃げるように踵を返した。
廊下を早足で歩きながら唇を噛む。
「最、悪……」
よりによってあいつがここにいるなんて。
同じ中学の人ですら嫌なのに、本当によりにもよって、一番会いたくなかった人が。
せかせかと歩き、見るからに使われていないのがわかる錆び付いたドアの前で足を止める。非常階段のドア。古すぎるのかここのドアは鍵を掛けても少し蹴飛ばす程度ですぐに開いてしまう。
私もそうだし、ここの生徒は割と皆知っていることだ。大きく足を振り上げたところで、はたと気がついた。
行ったらわかるということは、海ちゃんがもう既にいるということでは。
試しにそっとドアノブを捻って引くと、ぎぃ、と耳障りな音と共に風が吹きこんできた。
「うっ、もー海ちゃんってばこんなとこで何してんの、風も強いのに。……まさか海ちゃんってぼっち飯派なの?」
うるさい蝶番に顔をしかめながらそろりと外に顔を出す。
酷く錆びて赤茶色に汚れた非常階段が延びている。その曲がっているあたり、ちょっとした踊り場のようになっている場所に見慣れた後ろ姿が見えた。
間違いない。あの寝癖の付いたままのふわふわの髪は海ちゃんだ。
「か――」
思わず顔をほころばせ、声を上げようとした時、とんと肩を叩かれた。
先生にでも見つかったのかと思い目元をひくつかせながら振り返ると、そこにあったのは……ついさっき見たいけ好かない顔だった。
「……は、はぁ!? あんた、なんで……」
「はいはい静かに。見つかるぞ。別に尾けてたわけじゃねえよ。ちょっと気が変わったから来ただけ」
激昂する私に南波は相変わらずけろっとした顔で人差し指を立てた。
「なんで『海ちゃん』がこんなとこいるのか、知りたいだろ?」
いちいち彼の名前をわざとらしく口にする南波に腹を立てながら呟く。
「行きゃわかる、って言ったのはあんたでしょ」
「そうだけどな。気が変わった、って言ったろ」
だから、それが意味わかんないって。
そうは思ったものの、口に出さずに南波を睨んだ。
「ウチの学校さ、もう一個あるだろ非常階段。そっちのが新しいし、正直こっちは取り壊さなかっただけって感じだろ」
「まあ、見るからに危ないよね。使われてないし」
「そ。てことは、ここにあえて来ている理由があるってことで」
「紛らわしい言い方しないでぱっと言いなよ」
唇を尖らせた私をちらっと見て、南波は細く開けたドアから向こう側を真っ直ぐ指さした。
「あっち3年の校舎だろ」
「……」
嫌な、予感。
「で、伊集が座ってるあたりは、向こうの校舎だと丁度3年6組くらい」
それって確か、神崎先輩の――
「わかった」
ごく小さい私の呟きに、南波がほんの少し体を動かしたのがわかった。聞こえたはずなのに、そのまま言葉を続ける。
「まあ遠いしそんなに見えはしないだろうけど、そういうのは恋してるあいつには関係な――」
「わかったっていってんじゃん!」
自分が声を荒らげたことにハッとする。自分の感情が手に負えなくて呆然とする私を、南波はいつもの調子をすっかり忘れてしまうほど、真顔で見つめている。真顔というよりも、ずっと……なんと言えばいいのか、そう、真剣な顔だった。
「ご、めん」
でもそれは一瞬のことで、バツが悪くてぎこちなく謝る私に南波はいつものへらりとした笑顔を向けた。
「……南波は、何がしたいの? 今も……今までも」
「さあ?」
南波はおどけたように両手を広げた。
「あのねえ、私は真剣に……!」
不意に、ピンポンパンポーン、と放送の音がして私は思考を途切れさせる。
『――2年7組、東峰さん。2年4組、南波くん。音楽室に来てください』
「これ顧問の声だな」
「え、今から?」
ちらっと時計を見る。そんな私を尻目に南波は肩をすくめる。
「あのじーさん話短いとこだけは尊敬できるから、大丈夫じゃね?」
「じーさんってあんた、ろくに部活も言ってないくせに、悪態は一丁前か……」
「ま、しかたねえから今は海ちゃんは諦めろよ」
「……うるさい」
いくら問題児だからといって、どうしてこんなにこいつのやること言うことにいちいちこんなにも腹が立つのか、自分でも分からなかった。
✱✱✱
部屋に入ってまず驚いたのは、夕歩と、そして神崎先輩がいたこと。
「すみませんね、学生の短い昼休憩の時間を削らせてしまって。南波くんもちゃんと来たんですね」
「まあ、たまには」
彼はやはり先生にもろくでもないと思われているらしい。
「私たち、今日の昼来いって呼ばれてたじゃん。どうせ忘れてたんでしょ?」
そう言って夕歩が南波と、そして私をちろりと見る。視線が痛い。それで急いで教室を出た私にあんなに驚いた顔をしていたのか。
「別に昼呼び出す必要はなかったんですが、私が今日の放課後はいないので。ただ届いたので少しでも早く渡した方がいいと思いまして」
そう言ってダンボールを差し出してきた先生に私はぴんと来て頷いた。
「これ譜面ですね? コンクールの」
「そうです。すみませんね、結局わたしがややたい曲になってしまって。ずっとやってみたかったんですよ。わたしは顧問というのも名ばかりで、自分の好みで曲を決めるなんて申し訳なかったんですが」
「いえいえ。私たちも部員皆で聞いていいよねってなったのでー」
頬に手を当てる神崎先輩に私も不本意ながら頷く。金管にも木管にも打楽器にも見せ場があって、序盤からある駆け上がるような盛り上がりにはぞくっとさせられた。
ただ、ずっと気になっていることがある。
ひとまず私はおずおずと挙手して口を開いた。
「あの、先生」
「はい?」
すこぶる口が重い。できれば聞きたくない。けど、後回しにされるのはもっとしんどい。
「この曲、冒頭トランペットの……長いソロがあるじゃないですか。本当にピンのソロ。伴奏無しの」
考えるだけで頭が痛くなるから、ずっと考えないようにしていた。
「でも流石にここは削れないと思うんです。家でも聞きましたが、このペットがあるからこそのこの曲じゃないですか。それに」
そこで知らぬ間に伏せていた視線を合わせると、先生が目尻の皺を深くしていた。先生も同じことを考えていたようだ。
言いたくなかったけど、仕方ない。
「今年も先輩……神崎先輩がいらっしゃいますし、吹ける方がいるなら吹くべきです。絶対。あんなに吹けるなら、ソロはプラスにしかなりません。寧ろ削ったら勿体ないです」
「……お前……」
何か言いたそうに南波がこちらを見る。何故そんな反応をされなければいけないのか。気がつかないふりをして先生を見つめる。
「ええ、そうですね」
やっぱりか、と思った。
そう思ったのに――微かにちりっと胸が痛んだから、やっぱり自分はろくな人間じゃないんだろう。
だから、先生の次の言葉に私は目を見開いた。
「ですから、オーディションをします」
「は、えっ……なんの」
「トランペットのソロのですよ。あれ? 東峰さんも今言ったじゃないですか、ここのソロは欠かせないと」
きょとんとした目で先生が私を見る。
「いや、そうですけど……! 先輩が吹くんですよね?」
呆気にとられる私に、ああ、と微笑んだ。
「確かに素人のわたしでも、神崎さんはとても上手だと思いますよ。しかしですね? 本来は3年生がいるのはイレギュラーなんです。いつも楽しそうに吹く萩さん。全く部活に来ませんが、本当は誰より実力のある南波くん。そして、あなた。2年生にも充分ソロを任せられますし、任せたいんです」
先生はまるで、何もかも見透かしているようだった。
「オーディション、やりたくありませんか?」
頭の中に、ソロのメロディーがぼんやりと流れる。
「このままで、本当にいいんですか?」
昨日も聞いた。何回も聞いた。もう音階だって覚えている。
……でも、私は、もう。
ぱくぱくと口を開閉する私を見て、先生は目尻を下げた。
「オーディションは、夏休みに入ってからやる予定です。それまでに、練習をしていてください」
音楽室を出ると、壁に寄りかかって腕を組んだ南波がようと声をかけてきた。
先に部屋出たじゃん、さっさと帰れ、と睨んで伝える。
「……まだ居たんだ」
「萩、俺こいつに話あるんだけど」
「はいはい了解、先帰っとくね」
「あ、ちょっと!」
情けも容赦なくさっさと去っていく友人の背中を恨めしく見つめてから、ふいっと顔を背ける。
「お前さ、ほんと変わったんだな。前のお前なら迷わず立候補してただろ。あんな風に人に譲ったりしない。たとえ相手が先輩だろうがなんだろうが」
「だから、そう言ったじゃん」
「なんでだよ。……それ、腹立つんだよ。ヘラヘラしやがってさ」
「あんたに腹立てられる筋合い無いし」
「お前はそんなんじゃなかっただろ!」
咎めるような言い方に思わず詰め寄る。
「今の私の何が悪いの!? こっちの方が……皆から、嫌われなくて済むのに!」
「それでも、あの時のお前はちゃんとお前だっただろ。今のお前はなんなんだよ!」
「知らない! 私はもうあんなのは嫌なの!」
大声を上げて、そのくせ耳を塞ぐ。
「言いたいことが言えなくても、したいことがわからなくなっても、それでも、今の方が、ずっといい……!」
責めるような南波の目が、あの時の彼女の目と重なった。冷たくこちらを見つめた、黒々とした大きな2つの穴――
私がいた中学校は、夕歩が南波に聞いたと言っていた通り、そこそこ名の知れた強豪校だった。たとえば、コンクールの会場に行けば若干遠巻きに見つめられるのが何となくわかる程度には。
私はあまり音楽について詳しくなくて、吹奏楽部には友だちに誘われて入ったから、その時は強豪だというのすら知らなかった。彼女は小学校からの友人でかなり仲が良かった。芽衣という名前のいつもにこにこしている優しい子で、部活に入ってからも私に色々と教えてくれた。
どちらかと言うと引っ込み思案、あまり自分から行動できるタイプでも声を上げられるタイプでもなかった私を、持ち前の好奇心で引っ張ってくれる子だった。
誘われてトランペットを志望した。本当は何でも良かったけれど、芽衣が言うならとそれを選んだ。でも、いざ楽器が決まってみれば芽衣はトロンボーンになっていた。先生が適性をみて楽器を割り振ったのだという。
今思えば、その時からもうおかしくなっていたのだろう。疎ましげな芽衣の視線に気がついていれば、声をかけられていれば、いや――その時点で辞めていれば。何かが変わっていたのかもしれないと思う。今更言っても、詮無いことではあるけれど。
トランペットを吹くのは、思っていたよりずっと楽しかった。周りに合わせて空気を読むことばかり上手くなっていた私にとって目を瞠るような経験だった。
その目立つ音はどうやっても隠れられない。だからこそ、自分の意志を強く持たなければいけない。誇りを持って、胸を張って、責任を抱いて吹かなければいけない。
まるできらきらと軌跡を描くような、空気を鋭く貫くような音を、自分が出していることが信じられなくて。
……別人になれたような気がした。
厳しい練習はむしろ嬉しかった。練習すればするだけ上手くなって、できないところが見えてきて、そのうち自分以外が気になるようになってきた。
思うままにそれを相手に伝えた。友だちでも先輩でも、誰でも関係なかった。自分が指摘すればより良い合奏になる。私は良い気になっていた。思い上がっていた。
気持ちが悪いくらい、自信に満ち溢れていた。まるで生まれ変わったみたいな気分だったのだ。
2年のコンクールの曲にソロがあって、先輩たちが吹くと思っていたら辞退した。後から思えば、私にねちねちと文句を言われるのが嫌だったのだろう。
しかし当時それに気がつかなかった私は、喜び勇んでソロを吹くことにした。
――そして、見事に失敗した。
一音目を外した。間抜けな音がホールに虚しく響いて、頭が真っ白になって、体が震えて、もう吹けなくなった。その後のことは、全く覚えていない。
自分を覆っていた膜がぱちんと弾けた。魔法は簡単に解けてしまった。虚勢は所詮虚勢でしかなくて、そう簡単に人は変わらないのだということを、その時知った。
途端に周りの目がよく見えるようになった。どうして今までわからなかったのか首を傾げたくなるくらい、全身がじりじりと焼かれているようだった。皆が、冷たい目で自分を見ていた。打ちのめされる私を見て、嬉しそうに嘲笑っているのがわかった。
強い学校だから、強くない学校だから、そんなことは関係なかった。そんな意欲とは関係なく、人の気持ちを考えない言動が相手を傷つけていたことを、自分が落ちてやっと理解した。浮かれて、思い上がって――そして叩き付けられてからやっと。
怖くなった。もう同じようには吹けなくなった。元の臆病な自分に戻った。
我に返って振り返ると、芽衣が酷く冷たく自分を睥睨していた。きっとずっとこんな風に私を見ていたのだ。
いたたまれなくなって、学年が上がる前に逃げるように部活をやめた。
あんなことになるくらいなら元の自分の方がずっといい。あんな目で見られたくない。もう誰も傷つけたくない。誰にも嫌われたくないのだ。
「本当に、お前が部長になればよかったのに」
そうまた南波が言うから、私はただ笑った。
「……仕方なく私を推薦してただけだよ、皆」
当時は喜んだけれど、今ならわかる。白い目で見られていたことを。
南波はへらへらしているいつもとは違って真っ直ぐにこちらを見据えた。その視線の強さにたじろぐ。
「俺は違ったけどな。お前が悪気があって言ってるわけじゃないのはわかってた。良かれと思って言ってたのも」
思わず一瞬固まる。初めて聞く言葉だった。そんなことを思っているとは、露ほどにも。
「でも……言い方とか、もっと他にあった。相手のことを考えないのは良くなかった」
南波はため息をつくと視線を逸らした。
「そういや、俺らがいた中学去年は県落ちらしい。まあ、そこまで落ちたらもう元に戻るのはほとんど無理だろうな」
「……そう、なんだ」
「何でもかんでも気を遣えばいいってもんじゃねえと俺は思う。今のお前は、つまらねえよ」
それだけ言い残して踵を返す。角を曲がって姿が消えたところで、大きく息を吐いた。
それなら、私はどうすればよかったの。どうすればいいの。
正解はくれないくせに、選択肢だけは寄越すから……もっと苦しくなるのに。