「……と、ちょっと彩菜!」

 揺れる身体に、まどろむ意識。重い瞼をゆっくりと開けると、目の前には白衣を着た真美の姿。

「あれ……、真美、どしたの?」

「どしたの? じゃないって。こんな所で寝てたら風邪ひくよ」

 え? と彩菜は机からのっそり顔を上げて周りを見た。たくさんの薬剤が均一に並べられた棚。その棚と同じ色をした真っ白のリノリウムの床。見慣れたこの場所は、そうだ大学の研究室だ。

「もうすぐテストだからってこん詰めすぎなんじゃない?」

 心配そうに目を細めて覗き込んでくる真美に、彩菜は眠気も払いながら首を横に振った。

「いや、そうじゃないんだけど……。単純に休みの日は早起きが苦手というか……」

 あははと困ったように力なく笑う彩菜に、真美は「はあ」と小さくため息をついた。

「餌やり当番の仕事が終わったなら、早く帰って家で寝なさい」

 まるでお母さんのような口調で、真美が呆れた様子で言った。その後ろでは朝ごはんを食べて元気になったのか、ちゅっちゅとマウスたちが鳴いている。

「あれ? そういえば康平と優介は……」

「二人ならさっきバス停に向かって歩いてたよ」

「え! 私、置いていかれたの?」