沖田さんの言葉に男の子の肩がびくりと震える。
ゆっくりと俯いた男の子の身体は小刻みに震え始め、次いで密かな嗚咽が耳に届いた。

「っ、……、この竹刀は、じいちゃんにもらったんだ」

男の子は今にも消え入りそうな程小さな声で話し出す。


「……俺、父さんの仕事の都合で何回も転校してたから……友だちができなくて。父さんと母さんがアメリカに行くことになったから、今はじいちゃんの家に住んでるんだ。でも、やっぱり中々友だちができなくて落ち込んでたら……じいちゃんが言ったんだ。っ、剣道、やってみないかって」

俯いている男の子の顔は見えないけれど、きっと、必死に泣くのを堪えているのだろう。

言葉に詰まりながらも胸の内を語っていく。


「本当は、剣道なんか興味もなかったけど……俺がやるって言ったら、じいちゃん、すっごく喜んでくれたんだ。だから一生懸命練習して、そしたらちょっとずつ友だちも増えていって……毎日すごく楽しくて。じいちゃんが応援に来てくれるのも嬉しくて、だから、いっぱい練習した。でも全然上手くならなくて、試合にも勝てなくて……っ、悔しくて、」

ぎゅっと握りしめられた男の子の拳は小刻みに震えていて、そこから溢れんばかりの悔しさが滲み出ている。