「さあ。やりましょうか」

沖田さんが竹刀を構えれば、男の子も踏んでいた竹刀を拾い上げて同じように構える。

二人の距離――間合いは二メートル程度だろうか。
男の子はそこから更に半歩程下がって、気持ちを落ち着かせるかのように一つ息を落とした。


――しんとした空気が辺りを支配し、密かな緊張感が漂う。
両者とも一歩も動かず相手の出方を窺っていた最中。


男の子が先に動いた。足を前へと踏み出して大きく竹刀を振り被る。

私には、やけにその瞬間がゆっくりに映った。


――と思った、次の瞬間。

気付けば私の身体は前へと踏み出していて、真っ直ぐに突き出した竹刀は男の子の喉元へと向けられていた。

「――一本、ですね」