「――あ、ではこうしませんか?僕と君とで一本勝負をしましょう。僕が勝ったらその竹刀は頂きますね。もし僕が負ければ、君の望みを一つ叶えます。これでどうですか?」

いかにも名案だとでもいうように、明るい調子で提案する沖田さん。
「どうせ剣道は辞めるんですし、いいですよね?」と言葉を続けると、男の子は尚更にグッと息を詰まらせてしまう。


「あれ?無言を貫くということは……やっぱり剣道が面白くないし詰まらないっていうのは、君が弱いからなんですね。勝負からも逃げてしまうような弱腰の精神じゃ、面白くないのも当たり前です。続ける価値もない。辞めてしまって正解ですね」

笑顔での挑発するような物言い。
これには流石にカチンときたのだろう。男の子は眉を吊り上げて抗議の声を上げる。

「っ、ふざけんな!誰が弱いって?!……やってやるよ。もし俺が勝ったら、お前、俺に土下座して謝れよな!」

鼻息荒く息巻いた男の子に、「はい。分かりました」と嬉しそうに返す沖田さん。