「っ、ちょっと、」

思わず声を上げてしまえば――私の声に被さるようにして、沖田さんの声が直ぐ傍で鼓膜を揺らす。


「――結月さん、すみません。少し身体をお借りしますね」


……身体を借りるってどういうこと?

沖田さんの言葉に疑問の声を上げようとするけれど、何故か私の身体はピクリとも動かないし、もちろん声も上げられない。……否、動かないのではない。


――自分の意志で動かすことができない。



「――そうですか。剣道はやめたんですね。ではその竹刀、僕が頂いてもいいですか?」

久し振りに素振りでもしたいなと思っていたんです、とにこやかな声色で告げているのは――私だ。

私の意志に反して口は滑らかに動き、すらすらと言の葉を紡いでいく。