話を黙って聞いていた男の子は私が話し終わると下を向いてしまい、そのままだんまりを決め込んでしまった。
……どうしよう。
静かな重たい空気を打破したいけれど、この子が話してくれないことにはどうしようもできないし。
心中で長い息を吐き出しながら、先程まで隣に居たはずの沖田さんについジト目を向けてしまう。
現在沖田さんが何をしているのかというと――自分の姿は視えないからと体育館の中を堂々と覗き込んだり、男の子の側まで行って壁に立てかけられている竹刀をまじまじと見たり……と自由に動き回っている。
まあ沖田さんの姿は男の子に視えないのだし、どうしようもないということは理解している。
……けれど、この空気を一切気にせず楽しそうな笑みを浮かべていることに関しては、ほんの少しだけ物申したくなってしまう。