「――ごめんなさい、今何か言いましたか?」 「……いいえ、大したことじゃありませんから。気にしないでください」 「さ、行きましょう」と歩みを進める沖田さん。 ――刹那のことだったけれど、沖田さんの笑顔に陰りが差した気がした。 でもそれは私の見間違いだと思えるくらい、ほんの一瞬のことで。 特に言及することはせず、私も沖田さんの後を追うようにして足を進めた。 ――――僕にはむしろ、その優しさが怖いくらいです。 小さな小さな呟きは、風に乗って空へと溶けていった。