「……気になりますか?」

沖田さんの声に、沈んでいた意識が浮上する。


「泣いていましたね、あの子」

――そう。一瞬のことだったが、はっきりと見えた。
大きな瞳から涙をポロポロと零す男の子の、悲痛そうに歪んだ表情が。


男の子が駆けて来た方向を見れば、胴着を着た男性の姿が見える。
怒声を発したのは、多分この人だろう。


遠目で表情までは見えなかったけれど、何かを考えるかのようにしばらく佇んだ後、踵を返して居なくなってしまった。

走り去った男の子の後を追うつもりはないらしい。