「それじゃあ、いっせーの、で一緒に漕ぎましょうか」

お互いに顔を見合って話していれば、和やかな空気に突然響き渡った怒鳴り声。


「おい、待て!勇也!!」

私が怒られているわけではないけれど、不意打ちの怒声に思わず肩が跳ね上がる。


声の聞こえた方へと視線を送れば、こちらに向かって走ってくる男の子の姿が見える。

小学生くらいだろうか。胴着を着ていて、片手には竹刀が握られている。



袴の裾を翻しながら私達の目の前を駆け足で通り過ぎていった男の子。

何気なく視線を向けていたけれど、その際に見えたのは――。