「――僕は、君の側に居ていい存在じゃない。……なんて、勝手について行った僕が言うのも可笑しな話ですよね」


自嘲するような薄笑いを浮かべながら、「すみません、自分勝手で。でもこれ以上貴女に迷惑を掛けたくないんです。……短い間でしたが、結月さんとお話できて嬉しかったです。ありがとうございました」と頭を下げられた。

言葉が出てこなくて俯いていれば、「夜道に女性一人は危険です。送ります」と先へと進んでしまう。


――歩き出す彼の手を引いてしまったのは、無意識だった。

もちろん実際に触れることはできないけれど、掌にどこかひんやりとした空気が感じられて、確かに彼が此処に居るのだと感じることができる。

沖田さんも私に手を引かれたことに気付いたのか、驚いた顔で足を止めて振り向いた。