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日中の穏やかな空気は鳴りを潜め、今はひっそりと静まり返っている壬生寺。

時刻は二一時をとうに過ぎている。
当然閉門されているので、境内に入ることはできない。


薄暗くひんやりとした空気に心細さを感じながらも、門の前で小さく沖田さんの名を口にしてみる。

「お、沖田さ~ん……」

しかし私の小さな声に反応する声は返ってこず、辺りは変わらずに静寂を保っている。


――もう、帰ろう。
帰って、夕食を食べてお風呂に入って、今日は直ぐに寝てしまおう。
寝てしまえば、全部忘れられる。

忘れて、ただ元に戻るだけだ。