――昨年の春、田舎から京都の大学へと入学した私は、新しい土地での生活に期待で胸を膨らませていた。

元々文学や日本史が得意だったため神社仏閣を訪れるのが大好きで、年に一度は家族旅行で京都へと赴いていたのだ。
これからは好きなことを学びながら、いつでも大好きな神社仏閣へ行くことができる。能天気にそんなことばかり考えていた。

しかし実際に大学生活が始まれば、終わらないレポートの山、慣れない一人暮らしにバイトも重なり、自分の好きなことをして過ごす時間なんて早々ゆっくりととれたものではなかった。

あっという間に春が通り過ぎて夏が終わって、秋ごろには大分ここでの生活にも慣れてきたが、次に私を待ち受けていたのは少しの孤独だった。

新しい友だちもできて、サークルやバイト先では良い先輩にも巡り会えた。
だけど真っ暗な1Kの部屋に帰宅すると、どうしても一抹の寂しさを感じてしまうのだ。

年の離れた弟に知られたら笑われてしまうかもしれない。
この年にもなってホームシックなんて、と。