「あ、そういえばさっきクローゼットから物音がしましたけど」

沖田さんが物体に触れることができるということは、やはり先程の物音は沖田さんが何かに触れたために起きたものなのだろうか。


私が思ったままに言葉を紡ぐと、沖田さんはハッとした顔つきで動きを止める。

「……あの、すみません。気になってくろーぜっと、という所に入ってみたはいいものの、暗闇に何も見えなくて四方に手を伸ばしてしまったんです。其の折に黒くて硬い、細長い筒のようなものがついた物を倒してしまいまして……すみませんでした」
「黒くて細長い筒……あ、多分掃除機のことですね。いえ、全然大丈夫ですよ。気にしないでください」

成程、あれは掃除機が倒れた音だったのか。原因が分かってすっきりした。