いつの間にか綻び始めていた桜を目に足を進めていれば、鞄の中にある携帯電話が音を立てて着信を知らせる。
画面に表示されている文字は――自宅?
何で自宅から……まさか。
慌てて通話釦を押せば、聞こえるのは耳馴染みの良い落ち着く声。
「“……あ、繋がりました。でもこれ、結月さんに聞こえてるのかな?結月さーん、聞こえてますか?”」
「お、沖田さん……?」
「“あ、聞こえた。ふふ、はい。沖田総司です”」
まるで悪戯が成功して嬉しいとでもいうように、クスクスと笑っている沖田さん。
どうして沖田さんから電話が掛かってきたのか状況を把握しきれていない私は、慌ててどういうことかと質問する。