結月の元へはこのまま帰らないつもりで、総司は家を出てきた。
――数日もすれば、僕のことなんて忘れてしまうだろう。
その方が彼女にとっても幸せなはずだ。
土方さんだっているのだから、あの人がきっと彼女を守ってくれる。
そんなことを考えて過ごしていればあっという間に日は落ちて、周囲に人の影はなくなる。
もう深夜だ。建物内の明かりすら消えていて、僅かばかりの街灯の光と月明かりだけが総司を照らしてくれる。
――結月さんは今何をしているだろう。もう眠ってしまっただろうか。
それとも……。
そこで、以前黙って居なくなった自分を探しに来てくれたことを思い出して、心臓が嫌な音を立てる。
――否、もうこんな時間だ。家にいるに決まってる。
そんな風に自身に言い聞かせながらも、胸に広がる不安は膨らんでいくばかり。
――少しだけ。姿は隠して、様子を見に行こう。
彼女の無事が分かれば、それでいい。
結月の様子が気になった総司は、彼女の前には姿を現さなければいいと考え、姿を消したまま彼女のいるであろう部屋へと急いで向かった。