私の身体に憑依した沖田さんと、土方歳三の生まれ変わりであるトシ先輩。
対峙してから数分が経つけれど、依然この場は静謐に包まれている。


「……俺は、前世なんて覚えちゃいねーが、」


――先に切り出したのは、トシ先輩だ。
ゆっくりと、滑らかな口調で話し始める。


「最近、夢を見る」
「……夢、ですか」
「ああ。浅葱色の羽織を着て、腰に刀をぶら下げて、軽口ばかり叩きやがる誰かに怒鳴り散らす夢だ。夢ん中でも声を荒げなきゃならねえなんて勘弁してもらいたい所だが――不思議と、嫌じゃねえ」


懐かしむように目を細めて語るトシ先輩の表情は、とても柔らかで――優しい。

その笑顔を見ていたら、何だか泣きそうになってくる。
この気持ちが私のものなのか、沖田さんのものなのか、あるいは両方か――分からないけれど。


「……なんで泣いてんだよ」

「男のくせに情けねーぞ。それとも立花が泣いてんのか?」なんて軽い悪態をつくトシ先輩。

だけど変わらず、その瞳は優しさを湛えて細められている。