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「あの、驚かせてしまってすみません」

青年は眉を下げながら、弱々しい声で謝罪の言葉を口にする。


――先程の騒ぎから数十分が経過した。

混乱して騒ぎ立てる私に驚いた青年は、狼狽えながらも必死な様子で話を聞いて欲しい、危害を加えるつもりはないということを主張してきた。

初めは警戒して距離をとっていた私だが、青年があまりにも困った笑みを浮かべるから。「信じてください……」と悲痛な面持ちで声を震わせるから。

一先ず話だけでも聞こうと思い、大人しくソファへと腰を下ろした。


青年は私から一メートル程の距離をとって、床に正座している。
ソファに座ってくださいと進めたいところだけど、この青年が何者か分かっていない今、警戒を解くのは正しくない選択だろう。