隣に並んで駅までの道を歩いていれば、急に視線を彷徨わせたトシ先輩。
私の顔から足元の方まで視線を配ってから、どこか腑に落ちない様子で眉を顰める。
「……今日は居ないのか?」
「居ないって……何のことですか?」
――もしかして、ひか先輩のことだろうか。
トシ先輩との共通の知り合いなんてサークル内の人しか思い浮かばないから、誰のことを指しているのかと一人一人頭に思い浮かべて考えてみる。
「最近いつも一緒にいるだろ。お前にくっついてるヤツ」
――――だけど、返ってきたのは予想外の言葉。
くっついてるヤツって……まさか。
「……トシ先輩、視えてたんですか?」
「ああ」
私の問い掛けに、返ってきたのは肯定の言葉。
「っ、だったら……!」
――だったら、早く言ってくださいよ。あんなに悩まずに済んだのに。
沖田さんと話してください。会って、あの人の寂しさを消してあげてほしい。あの人の後悔が、心残りが少しでもなくなるなら――どうすれば良いのか、一緒に考えてほしい。
頭の中でぐるぐるとたくさんの思いが巡る。
言いたい言葉はたくさんあるけれど何から伝えればいいのか分からなくて、胸でつかえた言の葉は中々音を成さない。