――沖田さんってば、どうして突然トシ先輩が好きなのかなんて聞いてきたのだろう。
トシ先輩のことはもちろん好きだけれど、それは恋ではない。
私にとって兄の様に慕える存在であり、良い先輩だ。
沖田さんの考えていることが分からなくて何だかモヤモヤしながら、すっかり冷めてしまった紅茶を一口含んだ。
――好きな人、か。
今まで恋人の一人もできたことのない私には、少し難しい話題だ。
幼い頃に初恋は経験済みだけれど、それが本当に恋だったのかと言われると自信を持って頷くこともできない。
でも――沖田さんにトシ先輩が好きだと勘違いされているのは、嫌だなと思う。
……何だろう、この胸いっぱいに広がるモヤモヤとした感じ。
何かが胸につかえているような感覚。