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夕飯を済ませてから、新調したマグカップ二つに紅茶を注ぐ。
ふわりと香る甘い匂いに何だか嬉しくなりながら、「どうぞ」と沖田さんの目の前に浅葱色のマグカップを置いた。


「ありがとうございます」
「いえいえ」

水色にも似た、美しい色――新選組の羽織にも使われていた色だったという、浅葱色。沖田さんにぴったりの色だと思う。

沖田さんの隣に腰を下ろして自分用の桃色のマグカップを口元に運ぼうとすれば、静止の言葉が掛けられた。


「あの、結月さん。もし良ければこの浅葱色の茶碗……まぐかっぷ、でしたっけ。結月さんが使ってくれませんか?」

そう言って浅葱のマグカップを差し出してくる沖田さん。


「それは構いませんけど……むしろ良いんですか?沖田さんの好きな色なんですよね?」
「はい。だからこそ……結月さんに使ってもらいたいんです」


そう口にする沖田さんの表情は、いつもよりどこか真剣みを帯びて見える。
手にしていた桃色のマグカップを机上に置いて、沖田さんから浅葱色を受け取る。


「それじゃあ……使わせてもらいますね。あ、この桃色のマグカップは沖田さんが使ってください。交換です」

浅葱色のマグカップを口に運べば、紅茶の鼻から抜ける優しい香りにホッとする。