――何か落ちたのだろうか。
腰を上げてクローゼットへと近付けば、次いで耳に届いたのは「ドンッ」と何かがぶつかったような音。
――何かが、おかしい。
クローゼットには主に衣類を収納している。
他にも色々と仕舞ってはいるけれど、棚の上の方に重い物を置いておいた記憶はない。だから上から物が落ちてきた、というのは考えにくい。
それに、今の音。
物が落ちた音、というよりは、何かが――誰かが、ぶつかった音のような。
そこまで考えて、頭の中が真っ白になる感覚に襲われた。
この部屋に、私以外の誰かがいる。
まさか、泥棒……?
足は床に縫い付けられたかのように動かないし、恐怖からか身体は小刻みに震え始める。
どうしよう、相手が刃物でも持っていたら。
もしかして、私はここで殺されてしまうのだろうか。
――息が、苦しい。