「ったく、まあ期限までまだ日があるから良いが、これからは気を付けろよ」
「はい……すみません」

自分に非があるので素直に頭を下げて謝罪すれば、トシ先輩の手が頭にのせられた。そのままぽんぽんと二度撫でてから、トシ先輩は自分のデスクへと向かって行く。

――トシ先輩は、こうやって頭を撫でてくれることがよくある。癖なのだろうか。
別に嫌ではないし、むしろ兄から甘やかされているような気持ちが味わえて、私は結構好きだけれど。


ほんの少し乱れた前髪を指で整えてから視線を上げれば、沖田さんとばっちりと視線が交錯する。

「……どうかしましたか?」

何か言いたげな表情の沖田さんを見て、小声で問い掛ける。

「……いいえ、何でもありません」

だけど取り繕ったような笑みで返ってきたのは否定の言葉だったので、この場ではこれ以上追及できない。少しの疑問を浮かべながらも、私は自分のデスクへと向かった。