「っ、ふふっ」
ついさっきまで沈んでいたのが嘘かの様に、思わず笑いが零れる。
それに気づいた沖田さんは、ジト目になって唇をほんの少し尖らせた。
「……結月さん、笑わないでくださいよ」
「っ、すみません。何だか沖田さんが可愛くって」
「可愛いなんて言われてもあまり嬉しくはありませんが……でもまあ、結月さんの笑顔を見ることができたので良しとします」
子どもみたいに口を尖らせていた可愛い男の人の顔には――今では大人びた笑みが浮かべられている。
この人は、無自覚でこういうことを言ってくるから狡い。
「沖田さんって……天然たらしですよね」
今度は私がジト目になっていることだろう。
口をついて出た言葉に、不思議そうに首を傾げている沖田さん。
私が言った言葉の意味をまるで分かっていないみたいだけど……そんな所がすごく沖田さんらしい。
「さ、早く帰って御飯にしましょ!」
未だにはてなを顔に滲ませている沖田さんを横目に、一歩二歩と先に駆け出す。
そうすれば慌てて後を追いかけてくる沖田さんが目に入って、私の口からはまた笑みが零れるのだ。