未だに重なり合ったままの手を見つめた沖田さんは、最後にもう一度、ぎゅっと私の手を握りしめるようにして動かしてから、ゆっくりとその手を解いた。
――実際に触れられていたわけではないのに、何故か温もりが消え去ったかのような感覚に襲われる。
どこか名残惜しさを感じながらも「それじゃあ帰りましょうか」と口にして、共に並んで歩き出す。
「明日からまた、大学に行く際はお供させてもらえませんか?」
「はい、もちろん良いですよ」
「あ、それにばいとが遅くまである時は言ってくださいね。迎えに行きますから」
「えっ、いや悪いですし大丈夫ですよ。もう少ししたら日も長くなるでしょうし」
申し訳なさから思わず否定の言葉を紡いでしまえば、ムッと顔を顰める沖田さん。
――この表情はあまり見たことがないので、中々に新鮮だ。
「……心配なんですよ。幽霊ですけど、それ以前に僕も男ですからね。こういう時くらい頼ってください」
斜め下に視線を落とした沖田さんは、照れ臭そうに耳の後ろを掻いている。