「あの、すごく今更な話なんですけど……沖田さんは寒さとか感じないんですか?」
出会った時から同じ紺色の着物を着用しているけれど、生地はそこまで厚くなさそうに見える。
私の問い掛けに天を仰いで少し考える様子を見せた沖田さん。
「そうですね、特に寒さを感じたことはないです。ですが……雪に触れれば冷たいとか、夏の日差しは暑いとか……生きている時に体感していたことは体がきちんと覚えているみたいで、何となく感じることはできるんです」
隣を歩いていた沖田さんの右手が、そっと私の左手に触れる。
「こうして人の手に触れた時の温かさも……幽体である僕でも何となく感じ取ることができるんですよ」
――微笑んだ沖田さん。重なっていた右手は直ぐに離れてしまう。
実際に触れてはいないけれど、矢張り左手にはどこかひんやりとした空気が感じられた。
でも……何故だろう。触れられた部分から沖田さんの熱が感じられたような気がして、体が熱くなっていくような感覚に襲われる。