「トシ先輩と……話したいですか?」
沖田さんの顔を見ていたら、思わずそんなことを口走っていた。
――もちろん、幽霊である沖田さんとトシ先輩が話すことが不可能だということは分かっている。
だけど……直接会って話すことはできなくても、この前の様に沖田さんに私に乗り移ってもらえば、会話することくらいはできる。
私にしては中々の名案が浮かんだと思い、喜々とした思いを忍ばせて声を上げたけれど――。
「……いいえ」
――沖田さんは首を振って否定の言葉を口にした。
「っ、どうしてですか?直接話すことはできませんけど、私の身体に乗り移ってもらえば……」
言い終える前に私の唇にそっと人差し指を当てた沖田さんは、優しい眼差しで言葉を紡ぐ。
「土方さんの顔を見て分かりました。土方さんは、きっと前世の記憶なんて持たずに今を生きているんだって。……それなのにわざわざ血生臭い動乱の日々を思い出させる必要なんてありませんよ。――あの人が何ものにも縛られることなく、幸せに生きている。それがとても嬉しいんです」