「……沖田さん」
「……っ、何ですか?」

足を止めて呼びかければ、一拍置いて私が歩みを止めたことに気付いた沖田さんは、遅れて言葉を返す。


「――何かありましたか?」

率直に聞いてみれば、眉根を下げて、何とも形容し難い表情になる。
どこか悩んでいるような、懐かしんでいるような――寂しがっているような。
思い違いかもしれないけれど、私の瞳にはそんな風に映る。


「……似ていたんです」

桜の木に視線を移しながら、ただ一言、愁いを帯びた瞳で口にした沖田さん。


「似ていたって……もしかして、トシ先輩のことですか?」
「……はい。似ていた、というよりは……生き写しかと思いました。いえ、きっとあれは――土方さん本人なんだと思います」
「土方さん本人?でも、待ってください。土方さんは……」


そこから先を紡ぐことができずに口籠ってしまうけれど、沖田さんは自分自身にも言い聞かせるかのように、はっきりとした口調で私の代わりに続ける。


「はい、土方さんは死んでいます。……もちろん、それは僕も理解しているんです。ですのできっとあの方は――土方さんの、生まれ変わりなんだと思います」