***
大学からの帰り道。
少し遠回りしようといつもは通らない土手道を歩いて帰る。
この通りは桜並木となっているので、あと一カ月もすれば綺麗な桃色の花が咲き誇ることだろう。
桜の蕾を見てそんなことを考えながら――ちらり。沖田さんを横目に見る。
いつもなら話も弾む帰り道だけど、今日の沖田さんの様子は……何だかおかしい。
私が話しかけても上の空で、生返事ばかり返ってくる。
時折はっとした様子で取り繕ったような笑みを浮かべては謝ってくるけれど、心ここに在らずなのは明白だ。
何かを考え込んでいるような……どこか思いつめた表情の沖田さんを目にして、私の心までざわついていくのを感じる。