「ほらね、言ったとおりでしょ?」
ぱちんとウィンクを落としたひか先輩は、「トシがあんなに素直に褒める後輩なんて中々いないよ」と優しく笑う。
俯き気味になっていた私の顔を覗き込んでにひひと笑ったかと思うと、「よーし、俺もレポート頑張りますか~!」と両腕を上へと伸ばしながらトシ先輩に続いて行った。
――――鬼の様に怖い先輩だけれど、その実誰よりも優しくて頼りになる先輩、なのだ。
恋情の類とは全く別物の感情だけれど、サークルに入った時から密かに憧れの気持ちも持っている。
そんな先輩に褒められたら、やはり嬉しい気持ちが胸を占めてしまうもので。
――トシ先輩がひか先輩と同じくらい女子たちからの人気が高い理由も、分かる気がする。
緩む口元を隠すように片手を当ててから、ぎゅっと口元を引き締めてデスクに向き直る。
沖田さんも待っていることだし、早く終わらせてしまわないと。
……あ、そういえば、沖田さんはトシ先輩に会ってみたいと言っていたっけ。
沖田さんの居る方へ視線を送ってみるけれど、沖田さんはこちらに背を向けているのでその表情は分からない。
視線の先を辿ってみれば、どうやらトシ先輩たちを見つめているみたいだ。
――トシ先輩のこと、気になるのかな。矢張り土方さんに似ているのだろうか。
また帰り道に話を聞いてみようと思いながら、半分ほどまで埋め尽くされた文字の羅列へと目を滑らせた。