ひか先輩から知りたくなかった事実を聞いてしまい思わず顔を顰めていた――その時。
「へえ。俺に気に入られて嬉しくねーのか立花は。贅沢な奴だな」
――――背後から聞こえる、この声は。
「あ、トシ!」
ひか先輩が嬉しそうに声を掛けている人物――俊也(としや)先輩。
今まさに私たちが話題に上げていた人物。
サークル内ではトシ先輩、トシさん、トシくんなんて渾名で呼ばれている。
「今ちょうどトシの話してたんだよ!ほら、前にトシ、立花のこと気に入ってるって言ってたよね?」
ひか先輩、余計なこと言わなくていいですから……!
トシ先輩の切れ長の瞳が真っ直ぐにこちらに向けられたのを感じ、気まずさを誤魔化すような笑みを浮かべてしまう。