「……それはひか先輩の勘違いだと思いますよ。トシ先輩が寂しがる姿とか想像できませんし」
「いやいやそんなことないよ!ああ見えてトシ、立花のこと大好きだからさ!」
「前に立花のこと、お気に入りだって言ってたよ~」というひか先輩の言葉に口元が引き攣るのを感じる。
「うぇっ、トシ先輩そんなこと言ってたんですか。それ、多分全く嬉しくない意味でのお気に入りって言葉だと思います……」
怒られたり使い走りにされたりすることも多い私にとって、トシ先輩は逆らっちゃいけない先輩ランキング一位に君臨する人だ。
私のことを“お気に入り”というトシ先輩の黒い笑顔が脳裏に浮かんでしまって、気分は急降下する。
――まあ優しいところもあるし、頼りになる先輩であることには間違いないけれど。