椅子に腰を下ろして一息ついてから斜め後ろへと視線を送れば、興味津々といった様子で周囲に目を配る沖田さんの姿が捉えられた。

見慣れない物が多いのか、視線があちこちに動き回っている。
まあ部員が持ち込んだ私物なんかも置かれているから、目を引かれる物は多いだろうと思う。

今は誰かがロシア旅行の土産だと言って買ってきたマトリョシカを興味深そうに見つめている。


いつもなら、沖田さんにこれは何なのかと一つ一つ教えてあげている所だけれど、流石にここでは声を掛けることができない。

沖田さんもそれは律儀に守ってくれていて、周囲に人が居る時には声を掛けてこないのだ。


――帰り道、沖田さんから質問攻めにあう未来が視えて、思わず笑みが零れそうになる。今日は人通りの少ない道を歩いて、遠回りして帰るのもいいかもしれない。

数十分後、尽きない会話の時間を思い浮かべて心が踊るのを感じながら、まずは今日までに終わらせておきたい課題に取り組もうとPCを起動させる。