時計に目を向ければ家を出るにはまだ少し早い時間だったけれど、沖田さんと一緒ならゆっくり散策がてら大学に向かうのも良いだろう。

鞄を持って「行きましょうか」と声を掛ければ、ふわりと後をついてくる沖田さん。

一切感じない足音に、やはり彼は幽霊なのだと実感させられてしまう。


――こうして目の前に居て、会話することだってできるのに。
何日も共に過ごしていても慣れない感覚に、胸には形容しがたい感情が燻る。

……否、こうして共に過ごすことに慣れてしまったからこそ、沖田さんが幽霊であるということを受け入れられない――受け入れたくない自分がいるのだろう。


視線を向ければ返ってくる柔い笑みを見て、胸がぎゅっと苦しくなった。