体育館に背を向けて二人で歩みを進めながら、浮かび上がった疑問を口にする。

「あの竹刀、いつの間に借りてきたんですか?」
「結月さんと勇坊が話している時です。道場内に置かれていたものを拝借してきました」
「そうだったんですね。……それは、勇也くんと勝負することを想定して、ですか?」
「うーん、想定していたわけではありませんけど……まあ何となく、ですかね」と何とも煮え切らない返答をする沖田さん。


「それじゃあ、何で勇也くんの竹刀が欲しいだなんて言ったんですか?」
「ああ、そのことですか。彼の竹刀を見てみたら、鍔の部分に名前が彫られていたんです。それに随分使い込まれたものだったので……何となく、思い入れのあるものなのかと思ったんです」
「それじゃあ、あれは発破をかけただけだったんですね」
「まあ、そういうことですね」

にっこり笑った沖田さんに、何だか毒気を抜かれたような気持ちになる。