ナレーションの仕事で収録スタジオに入ったのはあれから数日後のことだった。
「準備はいいか?」
来栖さんとふたりのスタジオ。わたしはオーケーサインを出す。レコーディング中のランプが点き、来栖さんからキューが出た。
「……」
声が、出なかった──。
マイクの前、まるで溺れてしまった魚のように口をぱくぱくとさせる私に、来栖さんがヘッドフォン越しに声をかける。
「おい、どうした?」
一度、手元のマイクのスイッチをオフにする。
「……あ……」
出る──。すうっと息を吸って、もう一度マイクのスイッチを入れた。
「……」
声を出そうとしているのに、ハ、という息にしかならないのだ。再度マイクをオフにして声を出してみる。
「あ……出る……DJタピーです……あ、あ、あー」
そしてもう一度それをオンにすれば、同じセリフは音をもたない息になった。異変に気付いた来栖さんが、顔色を変えて飛び込んでくる。
「お前、もしかして」
「来栖さん……声が出ない……」
頭の中が真っ白になった。
「準備はいいか?」
来栖さんとふたりのスタジオ。わたしはオーケーサインを出す。レコーディング中のランプが点き、来栖さんからキューが出た。
「……」
声が、出なかった──。
マイクの前、まるで溺れてしまった魚のように口をぱくぱくとさせる私に、来栖さんがヘッドフォン越しに声をかける。
「おい、どうした?」
一度、手元のマイクのスイッチをオフにする。
「……あ……」
出る──。すうっと息を吸って、もう一度マイクのスイッチを入れた。
「……」
声を出そうとしているのに、ハ、という息にしかならないのだ。再度マイクをオフにして声を出してみる。
「あ……出る……DJタピーです……あ、あ、あー」
そしてもう一度それをオンにすれば、同じセリフは音をもたない息になった。異変に気付いた来栖さんが、顔色を変えて飛び込んでくる。
「お前、もしかして」
「来栖さん……声が出ない……」
頭の中が真っ白になった。