「顔!緩みっぱなしだけど」
「だって昨日また、ユージさんが読んでくれたんだもん~」
「まぁたラジオ!?」
「またって言うけど、すごいことなんだから!」

 午前中の講義が終わった教室で、私は緩んだ頬を包みながら足をぶらぶらとさせる。赤飯記念日──勝手に名づけた──以来、毎週メッセージを送っている努力が認められたのかコンスタントにそれを読んでもらえることが増えた。とは言っても、1カ月に1度読まれるか読まれないか。もしくは時間の都合上ラジオネームだけが一気に紹介されることもある。それでも十分だった。ユージさんの声で「タピ・オカ子さん」と私の名前を呼んでもらえるだけで天にも昇る気分だ。

「いや、それあんた本名じゃないじゃん」
「いいの、私改名したの。タピ・オカ子に」

 昨日の夜は、すごいことが起きた。なんと、ユージさんが私のことを“タピちゃん”と呼んでくれたのだ。紹介されたメッセージは、ユージさんのことを表現した 『憧れの人がいるのですが、なかなか会うことが出来ません。この気持ちはどうしたらよいのでしょう?』というもの。我ながら、なかなかにイタイメッセージであることは自覚している。このメッセージに対し、ユージさんは言ったのだ。

「タピちゃん、遠距離してるの!?」

 “ラジオネーム タピ・オカ子さん” と “タピちゃん” では大きな違いだ。一気にユージさんとの距離が縮まった気がして、私は部屋でひとり叫んだ。

 ユージさんは真面目で実直な印象だ。いつも優しくて穏やか。だからだろうか、番組宛には相談のメッセージなどもたくさん届いていて、ユージさんはいつもリスナーの心に寄り添うような言葉や曲をプレゼントしてくれる。番組内で紹介される相談やメッセージは、そのリスナーだけじゃなく、きっと誰もが一度は考えたり悩んだり経験したりしたことのあるようなものばかり。だからこそ、多くのリスナーたちは心を響かされ、勇気をもらい、また一週間頑張ろうと思えるのだ。