「俺がアメリカに行く事を決められたのは、タピちゃんのおかげなんだよ。ずっと、もっとパーソナリティとして一流になりたいって思ってた。音楽のこともきちんと学んで英語も話せるようになりたい、向こうで色々な技術を身に付けたいって思ってた。ずっと思ってたんだけど、なんだかんだ居心地がよくて今の場所に居続けた。このままでもいいかなって甘えが出てたんだ。でもそんなときにさ、タピちゃんがパーソナリティを目指すって言ったんだ」
私の両手をもう一度きゅっと優しく握って、彼は言い聞かせるように少し腰をかがめて目線を合わせる。
「タピちゃんさ、有言実行したよね。やるって宣言して、確実に着実に学んで吸収してどんどん成長していってる。そんな姿を見て、俺もしっかりしなきゃと思った。いつまでもタピちゃんに追いかけてもらえる俺でいるために、俺は俺で成長し続けないといけないって思ったんだよ」
ぱたぱたと溢れる涙を、ユージさんはそっとパーカーの袖で拭いてくれる。
「だから、泣いたりしないで。俺も一流のパーソナリティになるから。だから、タピちゃんもがんばれ。世界中のどこにいたって、俺はタピちゃんをずっとずっと、応援しているから」
そんな風に、口をへの字にしないでよと、ユージさんは笑った。わたしはきっと、さぞかしブサイクな顔をしているのだろう。
『4時55分発ニューヨーク行 NL107便にご搭乗のお客様は……』
アナウンスが響いて、ユージさんは電光掲示板を見上げた。時間が、来たようだ。
「それじゃ、俺行くね」
そっと手が離されて、行き場を失ったわたしの指先は虚しく空を切った。これが最後なら──最後くらい、笑わないといけないんだろう。涙はとめどなくあふれるけれど、それでもそんな想いだけはぽつりと浮かぶ。無理矢理に口角をあげてみて、無理矢理に微笑んでみた。
「……DJユージさん、だいすきです」
言った瞬間、一番大きな涙の粒が、ぽろっと目尻から頬に零れた。彼は一瞬目を見開いたあと、口元をきゅっと結んで頷いた。
「……ありがとう。これからも頑張ってね、DJタピちゃん」
そう言って、わたしがだいすきだったエクボを浮かべて、彼はくるりと背を向けた。そしてそのまま、搭乗口へと消えていく。
ユージさん
ユージさん
もう会えない。
もう話したりできない。
さみしいし、かなしいし、私は彼を恋しいと思うだろう。
──だけど
きっとわたしたちは繋がっている。
電波を通して、同じ世界で生きていく。
わたしたちはきっと、ひとりぼっちなんかじゃない。
私の両手をもう一度きゅっと優しく握って、彼は言い聞かせるように少し腰をかがめて目線を合わせる。
「タピちゃんさ、有言実行したよね。やるって宣言して、確実に着実に学んで吸収してどんどん成長していってる。そんな姿を見て、俺もしっかりしなきゃと思った。いつまでもタピちゃんに追いかけてもらえる俺でいるために、俺は俺で成長し続けないといけないって思ったんだよ」
ぱたぱたと溢れる涙を、ユージさんはそっとパーカーの袖で拭いてくれる。
「だから、泣いたりしないで。俺も一流のパーソナリティになるから。だから、タピちゃんもがんばれ。世界中のどこにいたって、俺はタピちゃんをずっとずっと、応援しているから」
そんな風に、口をへの字にしないでよと、ユージさんは笑った。わたしはきっと、さぞかしブサイクな顔をしているのだろう。
『4時55分発ニューヨーク行 NL107便にご搭乗のお客様は……』
アナウンスが響いて、ユージさんは電光掲示板を見上げた。時間が、来たようだ。
「それじゃ、俺行くね」
そっと手が離されて、行き場を失ったわたしの指先は虚しく空を切った。これが最後なら──最後くらい、笑わないといけないんだろう。涙はとめどなくあふれるけれど、それでもそんな想いだけはぽつりと浮かぶ。無理矢理に口角をあげてみて、無理矢理に微笑んでみた。
「……DJユージさん、だいすきです」
言った瞬間、一番大きな涙の粒が、ぽろっと目尻から頬に零れた。彼は一瞬目を見開いたあと、口元をきゅっと結んで頷いた。
「……ありがとう。これからも頑張ってね、DJタピちゃん」
そう言って、わたしがだいすきだったエクボを浮かべて、彼はくるりと背を向けた。そしてそのまま、搭乗口へと消えていく。
ユージさん
ユージさん
もう会えない。
もう話したりできない。
さみしいし、かなしいし、私は彼を恋しいと思うだろう。
──だけど
きっとわたしたちは繋がっている。
電波を通して、同じ世界で生きていく。
わたしたちはきっと、ひとりぼっちなんかじゃない。