「みなさんこんばんは!DJユージのミッドナイトスター!今夜も始まりました。いや本当に寒いですね。毎週毎週このセリフ言ってる気がしますけど、本当に寒さがどんどん本格化していってません?だけど僕、冬は好きな季節ですね。なんか考え事に適していると言うか」

 今夜もミッドナイトスターはいつものように軽快なトークとセンスのいい音楽、おもしろいメッセージで進んでいく。こうやってずっとひとつの番組を続けていくというのはどういう気持ちなんだろう。私はまだ代理パーソナリティしかやっていないけれど、いつかは自分の番組を持てるようになりたい。
 ふと、久しぶりにメッセージを送ってみようかなという気持ちになった。お守りのお礼もちゃんと言えなかった。それとなく感謝の気持ちとか伝えてもいいんじゃないかな。自分への言い訳のように言い聞かせて、久しぶりにメッセージフォームを開いた。

『ユージさんお久しぶりです。実は今日、とても嬉しいことがありました。戸惑いと驚きでうまくお礼を伝えることが出来なかったので、この場を借りてその人にお礼を言わせてください。私はこれからも、自分の道を精一杯進んでいきます。追い付けるよう、頑張ります。本当にありがとうございます』

 メッセージは読まれないまま番組のエンディングに差し掛かった。読まれなかったことは構わなかった。今では、番組にどれほどのメッセージが送られてきて、その中で限られた数しか紹介出来ないという番組側の事情もよく分かる。ユージさんの目に、少しでも入りますように。そう祈りながら私は翌日の資料の整理を始めた。明日はインタビューコーナーの収録がある。

「というわけで、今日もあっという間に時間が過ぎてしまいました。いや本当早い。そして僕がこの番組を始めさせてもらってから3年が経ちました。本当にあっという間で僕自身驚いています。ここではたくさんのリスナーさんと出会って、色々な話を聞かせてもらって、コミュニケーションがとれて。なんか僕にとってはこう、仲間っていうか、むしろ家族みたいなそんな感覚でした。だからみなさんに本当にお礼が言いたいです。こんな僕の番組にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。みなさんがこれからも元気で、幸せな毎日を過ごしていけることが僕の喜びです」

 不自然な感覚に作業していた手はぴたりと止まる。どくんと嫌な音が胸の奥底で響いた。

「この番組を通しての縁が、これからもどこかで続いて行ってほしいなと心から願っています。突然になりますが、ミッドナイトスターは今日で終わりになります。みなさんとの出会いは僕の宝物です。今まで本当にありがとうございました。以上、DJユージでした」

 手元にあった紙たちが、バサリと足元に舞い散る。スピーカーからは他番組のCMがポップな曲と共に流れていた。