初めてもらった仕事、初めてひとりでやりきったもの。確かに手ごたえがあった。相手の女性もたくさん話してくれたし、私自身とても楽しかった。我ながら、話すことは向いているのだなとさえ思った。このままこのコーナーが好評だったら、いつかスタジオで話せるチャンスが来るかもしれない。もしそんな日がきたら、リスナーさんたちからの反応はあるだろうか。あの新しいリポーターはどこの誰?だなんて、話題になったりして。
 そんな風に、私の鼻はぐんぐんと伸びていて、そして完全に浮かれていた。足が地から浮いていたのだ。しかも、何の根拠もない自信だけで。

「どうしてですか。何がいけなかったんですか?」

 そう食い下がっても、プロデューサーは首を振る。「もう一度、インタビューし直して来い」とだけ言った。

 一体何が悪かったのだろうか。きちんと10分で収めたし中身の濃いものになっていたはずだ。もう一度インタビューに行くにしても、何がいけなかったのかを理解していなければ同じことの繰り返しになるくらいは分かった。それでも、考えても考えても分からない。ぐっと拳を強く握って、歯を食いしばってオフィスを出た所でどんと誰かにぶつかった。

「いって……ってお前、どうした……?」

 真っ赤な目の私を見て驚いていたのはヒロさんだった。

「……なんでもありません、失礼します……」

 そう言って足早にその場を去った。こんなの、情けなくて、悔しくて、どうしようもない。ヒロさんが言ってくれた、チャンスを無駄にするなという言葉がリフレインする。頑張ってねと言ってくれた、ユージさんの優しい声が鼓膜を揺らす。私は一体、どうしたらいいのだろうか。

 家に帰って泣き続けた。悔しい、情けない、悲しい、苦しい、恥ずかしい。何が、この仕事向いているのかも、だ。私の小枝のような自信なんて、いとも簡単にポキリと折れてしまったじゃないか。生半可な気持ちでやれるものではないと分かっていたはずだ。社会はそんな甘いものじゃないっていうことも分かっていたはず。だけど、本当は何も分かっていなかったのかもしれない。必死に夢を追いかけて努力してきているようで、何もしてこなかったのかもしれない。私にこの仕事は、無理なのかもしれない。

 そんな風に、泣きはらして、もうラジオのことなんか考えたくもないはずなのに、時間がくればユージさんの声を聞きたいとそう思ってしまう。ユージさんなら、どう考えるんだろう。もし、ユージさんが同じ状況ならば。ほぼ無意識のようにスマホを取り出し、画面をタップしていく。

『ユージさんならば、どうしますか?』

 聞きたい。ユージさんに、聞いてほしい。ユージさんの答えを、聞かせてほしい。ラジオネームを入力する欄に “タピ・オカ子” と入力する直前で、結局私はメッセージフォームを閉じたのだった。