初めてのインタビューは、無事に終わった。
 今回は宝石の鑑定士として海外を飛び回っているという女性が取材相手。彼女の話はとても興味深く、どんどんと自分の中で聞いてみたいという思いが生まれ、質問もたくさんできた。10分は本当にあっという間で、聞きたいことの半分も聞くことが出来ていない。それほどに、彼女の話を聞くことに夢中になっていたのだ。

 それでも、初めてにしてはきちんと出来たのではないかと思う。今までレッスンを頑張ってきた甲斐があった。相手の方も楽しそうに話してくれたし、本当に楽しい時間を過ごせた。私、この仕事を目指してよかった。自分で思っているよりもずっと向いているのかもしれない。そんな風にインタビューを振り返りながら、データを局に持っていった。

 番組プローデューサーは年配の男性で、数多くの番組を手がけてきている有名な人だ。私のやる気を買ってくれて、いつもかわいがってくれている。

「どうだった?初の収録は」

 メガネを持ち上げて、プロデューサーは私を見てにこにこと笑った。いつも温厚で優しい。昔は鬼プロデューサーだったと噂で聞いたことがあるけれど、にわかには信じられない。

「楽しかったです!」

 そう答えながらデータの入ったUSBを手渡すと、プロデューサーはふむ、と小さく首をひねった。楽しかった、か──と小さく口の中で呟いたのが聞こえた気がした。
 山積みになった資料の上に置いてあったヘッドフォンを耳につけると、目の前のパソコンで手渡した音源を聞き始めるプロデューサー。そわそわした気持ちでそれを見守る。プロデューサーは腕を組んで目を閉じ、くるくる回る椅子の上でたまに体を左右に揺らせた。ああ、この感じ、すごく緊張する。だけど褒めてもらえるのではないかと、どこかにそんな小さな期待もあった。

 そうして10分が経過した。プロデューサーはそっとヘッドフォンを外すと、わたしを見つめ、そして静かにこう言った。

「こんなもの、流せるわけないがないだろう」
 
 ──と。