「どうもこんばんは!DJユージです」

 月曜深夜の癒しの時間。毎週この時間、私は大好きな紅茶を淹れてそれを飲みながらラジオを聞くことにしている。
 今夜もユージさんは最高にかっこよくて、トークのキレも絶好調。音楽が大好きだというユージさんが選ぶ曲は、どれもおしゃれでセンスの良いものばかり。この番組を聞き始めてから、ずいぶんと私も洋楽に詳しくなった。
 
 ──さて、今宵はメッセージを読んでもらえるだろうか。
 
 あの日──ユージさんに初めてメッセージを読んでもらった日──の翌日、約束通りお母さんは小豆と餅米を買ってきてくれた。きっとすぐにこの子たちに活躍してもらう日が来るだろうと思っていたのに、未だ彼らは食品庫の中で眠ったままだ。
 毎週メッセージを1通送る。それは近況報告だったり、昨日見た夢の話だったり、ユージさんへのファンレターだったりしたけれど、あれ以来一度もそれらが電波に乗って聞こえてきたことはない。

 毎週送るメッセージ。ユージさんの目に入っているのかいないのかさえも分からないこの状況は、仕方ないとはいえ少しがっかりしてしまうこともある。しかしこれは、ミッドナイトスターが人気番組だという証拠。回を追うごとに届くメッセージが増えていると、番組スタッフさんのブログに書かれていた。
それに、ラジオの楽しみとは何もメッセージを読まれることだけではない。他のリスナーさんの投稿にくすっと笑ってしまうこともあるし、それに対するユージさんの返しに、なるほどとうなずくこともある。

 ラジオというのは番組スタッフとリスナーの一体感が生まれるメディアだ。会ったこともないユージさんに私たちはいつも元気をもらい、顔も知らないリスナーさんの言葉に笑い時には涙することもある。街ですれ違っても分からない間柄なのに、番組をきっかけに同じ音楽を聞いていたりするかもしれない。
 メッセージが全てではない。読まれないからって、何も人生が終わるわけじゃない。それでもわたしは小さな願いを込めて今夜も指先で心を電波に乗せてゆく。

 ──きっといつか
 ──きっといつか

 ユージさんが私の名前を呼んでくれる日がやって来る。彼がつけてくれた、この名前を──。