あれから、ユージさんはスタンドに来なくなった。最後に残されたメモに書かれていたのは 『タピちゃんの夢が叶いますように』という一言。ユージさんなりに、1リスナーである私と個人的に関わるのはどうかと思ったのかもしれない。これでよかったんだ。そう思うくせに。そう言い聞かせているのに──

「さあ今夜も始まりました!ミッドナイトスターのお時間です」

 毎週月曜日の深夜になると泣きながら、それでもユージさんの声を聞いてしまう私は本当に矛盾しているし、バカだと思う。だけど、聞かずにはいられないんだ。もうメッセージだって送れないのに。


「ちょっとしたリポーターの仕事が決まりそうよ」

 ある日事務所に行くとマネージャーさんからの突然の知らせ。レッスン期間は長く厳しいと言われていたから、自分の声が電波に乗る日がこんな早く来るなんてと驚いた。だけど、これは大きなチャンスだ。短かろうがなんだろうが、初めての声の仕事だ。

「ユージさん元気かな……」

 ラジオで声は聞いている。だけど、最後に会ってから、月日は流れていた。彼は元気なのだろうか。今は仕事前に何を飲んでいるのだろう。私のことなんかもう忘れてしまったかな。報告したい。声の仕事が決まりましたって、一番に伝えたい人は、やっぱりユージさんなのに。──私の声は、もう彼には届かない。