「嘘ついていたこと謝る。本当にごめん」

 ユージさんはそう言って、頭を下げた。男の人にこんな風に面と向かって謝られたことなんて今までない。どうしたらいいのか分からなくて膝頭をじっと見つめる。それでも、彼が頭をあげる気配がなく、仕方なく言葉を探し出した。

「いつから気付いていたんですか?私のこと」

 今思えば、読まれこそしなかったものの、タピオカのお店でバイトを始めたとメッセージを送ったことがある。バイト先とユージさんのスタジオは目と鼻の先だ。

「ついさっきの本番中。メッセージもらってからガラスの向こうに見つけて、そこで初めて繋がった」

 騙すつもりはなかったんだよ、ほんとに。そんな風に付け加える。そこに嘘はないのだと思う。ユージさんは業界の人で、さっきも言っていた通り声の仕事をしている。顔出しもしていなかったから、彼のプロとしての意識がそうさせたのだろう。彼が名乗っていた”星倉”という名前は、あるリスナーの本名を借りたのだと彼は説明した。確かにメッセージを送る欄に、ラジオネームと共に本名を記入する欄があったことを思い出す。

「まさかさ、あそこで働いていたあの子がタピちゃんだったなんて、思わなかった」

 驚いたのは、彼も同じだったということ。何と返せばいいか分からなくて、口の中のタピオカをぐにぐにと噛み潰す。

「……怒ってる?」

 伺うように言われれば、なんだか申し訳ない気持ちになってぶんぶんと首を横に振った。

「ただ、びっくりしただけです」
「そっか……うん、そうだよな……」