ユージさんの声が、こんなに早い時間にスピーカーから流れてくるのはとても不思議で、そして謎の高揚感が体を包んだ。きっと今頃、彼女はユージさんが話している姿を目の前で見ているのだろう。彼女の友達はユージさんの大ファンだと言っていた。きっと、喜んでくれている。それだけで俺は十分だ。

 今日は祝日。だけどどこかに出かける予定なんかは入れていない。今日の予定は、家でラジオの特番を聞く、というものだ。確かに今俺は部屋にひとりきり。誰かと一緒にこの時間を共有しているわけでもない。それでも、彼女がいま目の前で見ている光景を、俺はラジオの電波を借りて聞くことができる。

 ユージさんはどんな顔をしているんだろう。イケメンなのかな。背が高いのか?どんな服を着るのだろうか。

 別に友達でもないはずなのに、どうしてだろうか。ユージさんに対して、勝手に親近感を持っている自分に気付いて少し笑った。いや、ユージさんだけじゃない。他のリスナーのみんなのことも、仲間のように感じているんだ。タピ子ちゃんがパーソナリティになる日がきたら、俺たちはみんな、彼女の番組のヘビーリスナーになるだろう。きっと多分。間違いなく。
 顔も知らないタピ子ちゃんや、名前をよく聞くリスナーたちの姿を思い浮かべ、自然と笑いがこぼれてしまう。それはすごく、穏やかな時間だった。部屋にいるにも関わらず、ひとりではないような、まるでそのスタジオの前にみんなと一緒にいるような、そんな感覚。

 ユージさんは次々とメッセージを読み上げていく。その場にいるリスナーのメッセージからは興奮している様子が感じられたし、留守番組からのメッセージには、ユージさんへのイメージを膨らませながら聞いている楽しさみたいなものが感じられた。

「じゃあ次のメッセージいくよ。ラジオネーム、カフェ子さん」