その瞬間、ぶわりと涙が溢れた。星倉さんだと名乗っていたあの人は、ユージさんだった。まさか、どうして。立っているのもやっとな状態の私をちらりと見ると、ユージさんは話し続ける。

「こういう仕事をしていると、正体を知られないために偽名を使うことがあったりします。顔出ししていないと特に。偽名を使う時は、みなさんからのラジオネームや応募の際の名前を参考にさせてもらうこともありました。だけどやっぱり嘘はだめだよね。ちゃんと謝らないといけないですね。ごめんなさい。改めまして、俺がユージです」

 くすくすとみんなは笑う。そんな中で、私はひとり涙を流す。こんなに近くにいたなんて。憧れのあの人が、こんな側にいたなんて。
 抹茶ミルクタピオカを飲むあの人は、星倉さんという名前なんかじゃなかった。抹茶ミルクタピオカを飲んでいたのは、あのユージさんだったのだ。
 声で分かるはずだった。だって私はいつも、抹茶ミルクタピオカって注文する彼の声が大好きだったじゃないか。どうして、どうしてその声が、ユージさんのそれと気付かなかったのだろう。

 驚きと戸惑いと情けなさとどうしようもない気持ちが渦巻いて、涙はとどまることを知らなかった。