「みなさんこんばんはDJユージです。月曜深夜いかがお過ごしでしょうか。今夜はね、満月ということでBaysideKOKOのスタジオからもまん丸いお月様が綺麗に見えています。みなさんもよかったら、月を見上げてみてくださいね。それでは今夜もいきましょう。DJユージのミッドナイトスター」

 心地よいユージさんのオープニングトーク。カーテンを開けて夜空を見上げれば、真っ白く輝く丸いお月様が姿を現す。不思議。今この瞬間、ユージさんもこの月を見上げているなんて。
 ふと、彼にそのことを伝えてみたいという気持ちが生まれて私は戸惑った。今までもユージさんの番組は毎週欠かさずに聴いてきた。おしゃれな音楽に軽快なトーク、リスナーさんとのおもしろいやりとり。ミッドナイトスターでは、リスナーからのメッセージを随時募集しているのも知っている。それでも今まで一度だって、番組にメッセージを送ってみようと思ったことなんてなかったのに。
 ラジオにメッセージを送ることは、自分には出来ないことだと思っていた。なぜって、番組で紹介されるメッセージはどれもおもしろいものばかり。笑いのセンスのかけらもない私は、そんな気の利いたメッセージなんか送れない。それに、聴いているだけでも十分楽しい。ずっとそう思ってきたはずなのに──
 気付けば私は指先ひとつ電波にのせて、想いを彼へと飛ばしていた。月明りに見守られて。