“こんにちは!いつもFMBaysideKOKOを応援してくださり、ありがとうございます。ご応募いただきました20周年特別番組への観覧のチケットですが、厳正なる抽選の結果、2枚のチケットをご用意することが出来ました。つきましては……”

「あ…当たったあああ!!」
「うるせえ星倉!仕事中だぞ!!」

 ──当たってしまった。チケットの応募締切が過ぎてから調べたところ、今回の応募はすごい倍率が予想されるとインターネットには書かれていた。なんせひとつの番組だけではない。局内の大御所DJ、大人気番組が一堂に会するスペシャルな一日だ。当たるか当たらないか、半ば諦めていたところではあった。
 昨日の夜からバタバタしていた俺は、届いていた封筒やちらしを出社時会社に持ち込んだ。そして今。上等で綺麗な封筒をはさみで開けてみたところ、通知の紙と、2枚のチケットが同封されていたというわけだ。

 数日前、想いを寄せる彼女にチケットのことを聞いてみたら、もちろん応募したとのことだった。結果はどうだったのだろう。彼女のもとにもチケットは届いたのだろうか。
 もしも彼女も当たっていたら、だれか友達でも誘うか。だけど倍率がすごいとも聞いている。つまりそれは、当たっていない可能性の方が高い。──多分。
 それに、俺は宣言をしてしまったのだ。もし当たったら、彼女を誘うと。
 自分で言ったのだからもう逃げられるはずはない。ああ、今になって緊張してきた。だけど、これは神様がやってみろ!と与えてくれたチャンスなのかもしれない。彼女はこの特番に行きたがっていた。普通のデートに誘うよりもオーケーしてくれる可能性は高い。……って俺、情けないな。

 そんなことを考えているうちに午後の休憩時間がやって来た。自分の膝をつよく叩いて奮い立たせる!しっかりしろ!やれる!やれるぞ!俺!!

 頭の中で、ユージさんの「がんばれ!」が響いた気がした。