「ねえ!公開生放送だって!!」

 レッスンが終わり、スマホを開いて驚いた。親友からの着信が20件。普段から着信が入ることはあるけれど、この数は異常だ。何かあったのかもしれないと慌ててかけ直すと彼女は興奮した声でそう言った。

「……えっ、待って何の話?」

 レッスンが終わったばかりの私には、一体何のことやらさっぱりだ。公開生放送って一体……。そう思ったときに、ラジオのことだろうかとぴんときた。そんな言葉を使うのは、テレビやラジオなどのメディア関連でしかない。

 あれから親友は、すっかりミッドナイトスターのヘビーリスナーになっていた。いや、ミッドナイトスターだけではない。大手企業への内定を早々に決めた親友は、BaysideKOKOの他番組もよく聞くようになっていた。他番組に関しては、もうわたしよりずっと詳しい。しかし、彼女は自称聞く専門。メッセージなどを送ったことはないという。送ってみたらいいのにと言ってみたら、まだその域まで達していないから!まだまだなの私は!と熱く語っていた。
 ラジオにどっぷりとハマってしまった彼女は、こうして何もない日は朝からラジオを聞きながら片づけをしたり、課題を進めたりしているらしい。最新の音楽事情ならこの番組、笑いたいときにはこれ、まったり癒されるのはこのDJさんの声なんだよねぇなんて、かなりコアな聞き分けまでしている。
 そんなヘビーリスナーである親友の話によれば、来月はBaysideKOKOの開局20周年ということで、公開生放送の特別番組が行われるらしい。その中に、ミッドナイトスターの枠もあると言うのだ。

「そ……それって……」

 声が震えてしまう。声だけじゃない、全身が小刻みに震えてしまう。そんなことはあるのだろうか。顔も年齢も非公開のユージさんが、リスナーの前に姿を現すだなんて、そんなこと──

「ユージさんに会えるってことだよ!!」

 受話器の向こうで親友がそう叫んだ。