驚いた。まさか彼女もミッドナイトスターのリスナーだったなんて。まあもちろん、メディアなのだから不思議なことはどこにもないのだけれど。
 小学生だって、学校での話題は昨日のあのバラエティ見た?とか、あのドラマがおもしろいだとか、クイズ番組で出題された問題をアレンジして友達同士で出し合ってみたりと話題はメディアでもちきりだ。しかし、自分の中では、ラジオで、しかも同じ番組を聞いているというのは、なんだかとても特別な気がした。同士、とでも呼びたいような、そんな感覚。それも、俺が想いを寄せている彼女が相手だということが、何よりも特別な意味を持った。

 彼女は俺の後ろに客がいないのを確認すると、ぐっと前のめりになって話し出す。甘く柔らかい香りが鼻をかすめた。

「ユージさんってすごく素敵ですよね!」

 彼女はとても嬉しそうに話す。ちょっと興奮してるのか、頬が紅く染まる。こんな顔もするんだ、かわいいな。

「でもわたし、あの番組に投稿されてるリスナーさんたちのお話も大好きで。あ!知ってますか!?キラキラさんの恋のおはなし!!」

 そこでこめかみあたりにヒヤリと嫌な汗がにじむ。そうだった、あの番組を聞いているということは──

「あ……?ああ……そんなのもあったような……」

 彼女は、俺の気持ちをまるごと全部聞いているということになる。もちろん、キラキラさんが俺と同一人物だと言うことまではばれていないとは思うけれど。
 白々しく視線を左右させた後に彼女を見ると、もう!と言いながら彼女は手を腰にあてていた。その姿もゲームのキャラクターのようでなんだかかわいい。

「星倉さん!キラキラさんのおはなし、すっごくすっごく素敵なんですよ。ピュアで、だけど一途に見守るキラキラさんの想いが優しくて……。それにユージさんや他のリスナーさんがアドバイスしたりしていて。そういうところもあの番組のすきなところです。みなさん、本当にあたたかいんですよね」

 彼女は、キラキラさんがこの俺だと知ったら、そしてその一途な想いが自分自身に向けられているものだと知ったら、どんな顔をするのだろうか。今と変わらず、瞳を輝かせてくれる?それとも──

「本当にうまくいってほしいって思っています、わたし」

 彼女がそう言って、静かに目を閉じた。